書きなぐり番長

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「Fate/kaleid liner Prisma☆Illya プリズマ☆ファンタズム」 感想

※ネタバレ注意 

鑑賞後の閲覧をオススメします

 

 

公開から遅れて1日、待ちに待った最新作「プリズマ☆ファンタズム」を鑑賞してきた。

まず一言で言うなら、「残念」。

これに尽きる作品であった。

 

今作は「ファンタズム」と名を冠した作品という事で、「カーニバルファンタズム」を思い浮かべるのも当然。

情報が公開されてからは、「プリズマ☆イリヤ」特有のギャグ時空に、さらに磨きがかかるのかと期待に胸を膨らませていたのだが、今作は「プリズマ☆イリヤ」の世界観に囚われすぎかなという印象だった。

 

まず言峰の経営するラーメン屋での騒動を描く一連の短編。「カーニバルファンタズム」でのアーネンエルベを思い出して懐かしい気持ちになったのは良いが、如何せんワンパターンな出オチコーナーである為に、4組目の美遊辺りはオチも何も想像出来てしまい白けてしまった(繋ぎのコーナーなので仕方ないとも言えるが)。しかし最後のタイガーパートに関しては、唐突な「麻婆水」の登場が個人的に凄く好きだった。今でもグラスが割れてからの一連の流れを思い返して、「麻婆水」ってなんだよ。と心の中で反芻してしまう。ただ、全編に共通する顔面からラーメンに突っ込むくだりが面白かったかと言うと微妙。クッションを販売するくらいにはウケると見込んでいるようだが。どうなのだろう。

これはお得情報であるが、どんぶりに顔を突っ込んでいる美遊の白くて小さい耳が可愛らしくて仕方がなかった。要必見。

 

次に、もしもルビーが第1話時点でイリヤ以外の女の子を選んでいたら…?というifを描いた2篇。

今回披露されたのは、イリヤのクラスメイト4人組の内、雀花と那奈亀の2人。パンフレットによれば残りの2人分も脚本自体は用意していたようで、どうせなら全員分見たかった。というか、那奈亀のキャラがイマイチ思い出せず、お姉ちゃんが出てきてやっと分かったレベルなので、これに関しては自分の知識不足に嘆く。

そして、このifから続く形での「カレイド☆ファイブ」。これは完全に「ダウンタウンのごっつええ感じ」内の人気コント「世紀末戦隊 ゴレンジャイ」を丸パk……もといパロディしたものなのだが、龍子の転身した魔法少女がどう見てもサファイアっぽい青色なのにカレイドルビーだったり、タイガーにかけられた全身モザイクだったり、制作陣の意図したのかしていないのか分からない微妙な部分がとても良かった。ミミちゃんのカレイドルビーも、イリヤのセイバーインストール時に似た中々可愛らしい衣装で、殺傷力の高そうな武器もかなり好み。

 

個人的に楽しみにしていたエインズワース家の面々は、今作1番の色モノコーナーで主役を張っていた。全員が性転換したifを描くというものだが、流石にダリウスの全裸を(女体化しているとはいえ)見るのは厳しいものがあった。失禁寸前のショタエリカの股間ドアップも中々キツい。気にしすぎか意識しすぎな気もするが、とにかくあのコーナーは生理的に受け付けなかった。人によっては、二次創作のネタができたと大喜びするのであろう… 

女体化したダリウスのビジュアルはまあまあ好みなので、こっちで本編をやってほしかったなと思わなくもないが。美遊が拷問を受けるシーンも、女性なら抵抗なくなるし。

ここまで賛否で言えば否が多い気もするが、短編それぞれにいい点はあったし、フフッと軽く笑えるくらいには楽しめている。しかし今作で1番冗長で退屈だと感じた、オールスターキャストで送る「全力缶蹴り」は、正直、見るに堪えないレベルであったと感じる。

イリヤ達で缶蹴りをする、というあらましは何の問題もない。凛が魔法でドーピングしたり、美遊が超人的な脚力で圧倒したり、如何にも面白くなりそうな要素は揃っている。実況・解説をルビーとサファイアが務めると軽く紹介をして始まるが、問題があったのは、全体のテンポをぶち壊すルビーとサファイアの実況・解説セリフであった。

引用できないのが残念な所ではあるが、実際に観た人なら分かると思う。

そもそもギャグ描写では、説明はしない(この場合受け手にツッコミを委ねる)か、ツッコミで場を湧かせるのが一般的だと考えているが、この「全力缶蹴り」では放たれるギャグを一つ一つ説明されてしまうのだ。

それがツッコミとして機能しているのなら問題はない。だがしかし、ルビーは状況を1から10まで説明し尽くしてしまう。

実況が頭から最後まで実況しなくても、競技をする当人だけで話を進めても面白いのは、「聖杯グランプリ」を見れば一目瞭然だが、ルビーは延々と説明を続ける……特に、エリカと言峰のくだりは会話の間に一々実況が入るので、テンポが悪いったらありゃしなかった。

なんというか、イリヤが既にツッコミに回っているのに、さらにその状況を説明する必要はあるのか?と、思ってしまうのである。

このコーナーで良かった点を挙げるなら、「雪下の誓い」のパロディ。どうせなら士郎と美遊兄で共演して欲しかったが。

 

さて、つらつらと文句を垂れたが、今作はやはり謎の人物「桜の兄」を主役にしたストーリーが1番気合いが入っていて、面白かった。

アサシンのクラスカードで英霊と一体化した桜の兄は、あの名セリフ「射精の〜」で一躍トップスターに(筆者の中で)躍り出たわけだが、今作でもそのビジュアルとスターっぷりは健在。

冒頭、お馴染みの「黒桜の部屋」から始まる「桜の兄」更生プロジェクトは、セラとリズ、ルヴィアの執事、バゼット、カレン、そして言峰の5人のプロフェッショナルと共に労働の喜びを知ろうという物であるが、1件目の、セラリズと掃除をする時点で順応しているアサシンに笑いが止まらなかった。

士郎を追い詰めた時のテンションで「重曹だあァ〜!」なんて言われたら我慢できるはずもない。

その後も執事修行では当主に取り入って乗っ取ろうとしたり、バゼットと共に、違法菜園を全身駆使して嵐から守ったり、保健室の良い先生になったり、射精と叫び続ける仕事に落ち着いたり。オチはしょうもない下ネタだが、やはりアサシン化慎二のポテンシャルは凄まじい。雪景色の中、無意味に射精と叫ぶ慎二には味わい深いものがあった。

今思えば、この慎二のくだりが一番プリズマ☆ファンタズムとして、ギャグ短編としてよく出来ている。他のコーナーは時系列・世界の垣根を超えた共演、パロディに留まっていたのに対して、この慎二のコーナーだけは明確にストーリーが存在し、それでいて全編がコメディとして成立している。

「ファンタズム」特有のあの空気が、このコーナーには流れている。単純に慎二が見たかっただけでもあるが、それを差し引いても面白かったのだ。

そう、これが見たかった、この「なんでアサシンのままなんだよ」「なんで」「なんで」と口走ってしまうようなギャグを畳み掛けられる、この空気を感じたかったんだ………

カーニバルファンタズム」の幻影を追い求めて辿り着いた先には、アサシンと化した間桐慎二が「しゃっせ〜」と元気にラーメン屋の店員をする光景が広がっていたのだ。

 

 

正直「プリズマ☆ファンタズム」は、慎二のコーナーを見る為に映画館へ足を運ぶ必要は無い。1800円あるならガルパンを見よう。美遊も全然出てこない。

だが、OVAとして販売されたら是非見てほしい。きっと、笑いのツボは人それぞれ。誰しもが自分のような感想を抱くとは限らない。この駄感想文から感じ取れる本編のつまらなさと、実際のつまらなさは大分違うと思う。

しかしどんなにつまらなくても、「プリズマ☆イリヤ」の新作というだけで気分も高揚するのがオタクというもの。丸1年音沙汰のなかった去年と比べれば、いささかマシというものである。

もう一度言うが、今作は「残念」であった。これならツヴァイヘルツを何話か抜粋して一纏めにした方が面白いだろう。パンフレットのインタビューを読む限り、まひろ先生はほとんど関わっていないように思えるが、それが悪いとも思わない。

きっと、求めていた物が違ったのかもしれない。

もっと美遊を出してくれれば、自分の中での評価もここまで下がらなかったかもしれない。

この映画を見た後の気分は、射精後の残尿感に近かった。と記憶している。

「プリズマ☆イリヤ ドライ」の続編が見れるその日まで、きっとこの気分は晴れないのだろう。